新規開業コラムの11回目は「院長の事務作業の増加について」です。今後新規開業をお考えの先生方に、令和6年6月の診療報酬改定以降に増えた院長先生の事務作業を解説いたします。今回は内科系または小児科の院長先生に増えた事務作業をご紹介いたします。
1.療養計画書の作成と、それに伴って必要になった患者からの署名
同改定で、高血圧・糖尿病・脂質異常症を主病名とする患者が特定疾患療養管理料から外され、生活習慣病管理料ⅠもしくはⅡに移行することになりました。生活習慣病医管理料を算定するためには、患者ごとに検査結果や目標値を記載した療養計画書を作成して、生活習慣の改善をしどうしなければなりません。また初回は患者に同意を得て署名をもらい、交付しなければならなくなりました。その後も4か月に1回療養計画書を更新して交付しなければなりません。
2.ベースアップ評価料の管理
同改定で、施設基準の届出をした上で、初診料や再診料等に外来・在宅ベースアップ評価料が加算できるようになりました。外来・在宅ベースアップ評価料は、算定した金額を全てスタッフのベースアップとして使わなければなりません。そのため、毎年計画書と、翌年に報告書を作成して厚生局へ提出する必要があります。
3.診療所に対する様々な補助金の申請
電子処方箋の導入、医療扶助・医療費助成のオンライン資格確認対応、物価高騰対策、生産性向上など、様々な目的とした補助金が国や都道府県から、矢継ぎ早に出されています。それぞれ申請方法・申請期限・領収書の添付の有無などが違うので、期限内に申請を完了させるための準備・書類作成に多くの時間が割かれています。※補助金内容を記載
4.新興感染症への対応・準備
同改定で、感染症、もしくはその疑いの患者を診た場合の外来感染対策向上加算が新設されました。外来感染対策向上加算の施設基準では、都道府県知事と医療措置協定を締結して新興感染症発生時に発熱患者等を受け入れる医療機関となること、院内研修会の実施や、連携先の医師会や病院とのカンファレンスや新興感染症発生時の訓練への参加などが求められます。
5.患者希望で先発医薬品を処方する場合の説明
令和6年10月から、長期収載品(後発医薬品のある先発医薬品)を処方する際には、一部に選定療養費を徴収することが導入されました。そのため、患者希望での先発医薬品処方の場合、患者負担が上がる場合がありますので、医師による十分な説明が必要となっています。
6.オンライン資格確認(マイナ保険証)への対応
オンライン資格確認の導入に当たっては、電子カルテベンダーやNTTとの調整、補助金申請など、多岐にわたる手続きが必要です。また「医療扶助(生活保護)のオンライン資格確認」「医療費助成(都道府県・市町村の各種公費助成の医療)の受給者証のオンライン資格確認」「スマートフォンのマイナ保険証利用」への対応など、導入後に手続きが必要な項目もあります。
7.診療報酬の新しい通知へのこまめな対応
同改定で新設された医療DX推進体制整備加算は、これまで3回の要件変更がありました。特にマイナ保険証の利用率の実績が要件に加わったことで、毎月自院に該当する加算を確認して、レセコンに登録を行う必要があります。
8.スタッフ採用の長期化と人件費上昇
応募者数の減少により、採用までの期間が長期化し、院長自ら採用活動に関わり続けるケースが増えています。給与・時給の上昇やそれに伴う既存スタッフの不満対応なども、新たな課題となっています。
9.経営面での資金対応
同改定が多くのクリニックにとって減収に繋がったことに加え、物価高騰による材料費の上昇、人件費の上昇で、資金繰りが悪化傾向にあります。そのため、クリニックへの一時的な資金貸付や、税理士との資金繰り相談を行う院長先生も少なくありません。
これらの業務負担により、診療終了後に夜遅くまで雑務に追われる先生方が増えています。
開業医の先生方が直面している現状を理解し、今後の開業計画にぜひお役立ていただければ幸いです。