新規開業コラム⑥<開業候補地の家賃交渉>

新規開業コラムの6回目は「開業候補地の家賃交渉」となります。さて現在の開業場所選定の種類を上げてみますと、

 

➀雑居ビルテナント(他業種が入っている)

➁居抜テナント(以前医療機関が入居していた)

③医療ビル(医療機関専門のビル)

④事業承継(現在医療機関が入居している)

⑤戸建て開業(自己投資の医療機関建築)という5種類の候補があるかと思います。そこで➀~➂までは入居する場合に賃貸借契約を結び、④は買主と売主との間で譲渡契約を結び、⑤はご自分でクリニックを建築いたしますので建築会社との請負契約等が発生いたします。殆どの医師は➀~➂のケースが多く、賃貸借契約書における家賃又は契約期間は開業後に大きな経費として影響してくることを意識しておくことが必要です。

 

そこで、かなり気に入った候補地が出ましたら、不動産会社又は医療ビル(入居予定調剤薬局が窓口になるケースもあります)へ事前に「出店申込書」を提出し、そのテナントを押さえた上で交渉に入っていきます。その後、早めに賃貸借契約書(ひな型)を入手し、賃貸条件のチェックをしていく事が重要です。具体的には、⑴家賃、⑵共益費(管理費とその内訳)、⑶他経費(礼金・仲介手数料・保証金など)、⑷契約期間、⑸更新期間、⑹更新時手数料、⑺工事区分(ABC工事)、⑻退去時条項、⑼家賃発生時期など諸条件などがあります。その中で特に重要なのが家賃(坪単価費用)、共益費(管理費の有無)、家賃発生時期、保証金という経費に関する所となります。

 

まずは交渉に入りましたら家賃の減額交渉に入っていきます。➀~➁の場合オーナーの意向により、医療機関でも減額が出来ないケースもあります。その際、「路線価」や「他テナント家賃相場」等を調べて提案してみることが大切です。③につきましては調剤薬局が窓口となり柔軟な対応をして下さるケースもありますが、オーナーの意向によっては難しいケースもあります。家賃は基本的に坪単価を下げられるか正攻法で交渉していきます。

 

またそれ以外では傾斜家賃の交渉を行います。傾斜家賃とは「入居時の家賃を低く設定し、年数の経過とともに一定の割合で上げていく制度」となります。1つの例としては、当初の坪単価18,000円(税別)の家賃を3年間だけ16,000円(税別)にして頂き、4年目から元の18,000円(税別)に戻す方法と、3年間分の残金(36ケ月×2,000円×坪数)を4年目以降の家賃に1年目~3年目を上乗せしていく方法などがあります。特にクリニック開業時は収入も少なく、経費は掛かかり資金繰りが厳しいため、このような傾斜家賃というやり方もあります。今までの経験で資金力や医療機関への協力的なオーナー様ですと傾斜期間の家賃補填も負担してくださる所もありましたが、今は殆どありません。新築テナントでは傾斜は認めてくれない傾向があります。

 

そして、家賃交渉が済みましたら、賃貸借契約書の内容のチェックを進めてください。特に⑵共益費(又は管理費の内訳確認)、⑷契約期間(長期契約は可能か)、⑺工事区分(B工事の負担があるのか)、⑻退去時条項(後任医師がいたらスケルトン返しは無しか)、⑼家賃発生時期(フリーレントの交渉)など諸条件の交渉もして下さい。また賃貸借契約書への不安が払拭できないようでしたら弁護士による「リーガルチェック(有料)」まで行うかどうかを検討して下さい。

 

最後に家賃交渉には交渉を行うに必要な情報収集には膨大な時間が必要になります。また交渉相手との距離感であったり、信憑性のある情報を用いて交渉を進める技術が無いと、先方との関係を悪化させる原因にもなってしまい、物件契約に辿り着けない事もあり得ます。このような交渉を円滑に進めるのが医療経営コンサルタントの役割でもあります。