新規開業コラム⑧<在宅医療を立ち上げるケース>

新規開業コラムの8回目は新規開業時の「在宅医療の立ち上げ」がテーマです。

新規開業にあたり、在宅医療をメインに据えて開業を検討されるケースが増えています。その際に3つの「診療方針」が必要になります。

まず、2つの選択肢から在宅医療の「第一の診療方針」を検討していきます。

①患者のほとんどを在宅医療で診ていくクリニック

②外来の合間に在宅医療に行くクリニック

 

①のメリットは初期投資が抑えられることです。在宅医療の場合、開業場所はマンションの一室(2LDK)で十分となります。一般的な物件と比べると賃料がかなり抑えられますし、内装工事費もほとんどかかりません。必要な機材も電子カルテ、訪問用タブレット、訪問車くらいなので通常の開業と比べると経費削減となります。一方で気をつけるべき点としては、患者の5%以上は外来として診なくてはいけないということです。在宅患者が全体の95%以上になりますと、厚生局で認可が下りる開設基準、診療報酬を算定するための施設基準が厳しくなり、在宅医療がメインと言っても、外来患者を診察できる設備にしておく必要があります。

 

②の場合は、外来の合間に在宅医療を「どの曜日」・「どの時間帯」に入れていくか、夜間対応をどうするか、どの施設基準を届け出るかを決めていく必要があります。平日休診日(または半休の午後)か昼休みに数件行くケースもあります。また、夜間対応(オンコール体制)も枕元に携帯電話を置いておき在宅患者または施設からの連絡に対応できる体制にしています。

 

在宅医療の「第2の診療方針」として、どこまで下記体制を整えていくかです。

①在宅医療で行う医療行為の範囲

②在宅医療の24時間体制の有・無

③在宅医療でお看取り対応の有・無

④在宅医療の連携(在支病・在支診)医療機関の確保

⑤在宅医療を訪問する曜日・時間帯

⑥在宅医療で訪問する地域

⑦在宅患者の緊急時の入院施設

⑧訪問看護STの提携先

⑨在宅医療の訪問先について(施設在宅またか居宅在宅)

⑩在宅患者の紹介先の確保

ということが上げられます。

 

また、在宅医療のスタート時から発生することとして、

❶ご利用者と訪問診療(保険診療)の同意書を交わす

❷ご利用者と居宅療養管理指導(介護保険)「重要事項説明・契約書」を交わす

❸月1回「在宅患者療養計画書」をご利用者への説明

❹月1~2回ケアマネジャーへ情報提供を行う

❺月1~2回調剤薬局へ服薬指導の指示を行う

❻訪問看護ステーションへの看護指示を行う

❼毎月医療保険・介護保険のレセプト請求を行う

❽医療・介護保険の負担金請求書の準備(ご利用者へ送付又は持参)

❾ご利用者の負担金支払の確認(自動引落とし・振込み・窓口支払)

❿ご利用者入院時の診療情報提供書の作成・病院担当医への連絡

などの準備をすすめていくことが重要です。

 

また、上記❾にもございます「訪問先」の開拓について、「自宅(居宅)」または「居住系施設(有料老人ホーム・サ高住・グループホーム等)」の2パターンがあります。これは在宅医療の「第3の診療方針」となり、医業収入に関わる重要な選択となります。

 

まず、通院困難で自宅療養されているご利用者は、地域のケアマネジャーにケアプランを作成してもらい、限度額以内の介護サービスをご利用されているかと思います。そのため、自宅療養のご利用者の情報はケアマネジャーが握っています。つまり、ケアマネジャーから紹介頂くルート確保が必要になります。これが1つ目です。2つ目の「居住系施設」は、各大手医療法人がアプローチしているにもかかわらずなかなか入れていないというのが現状です。この場合の開拓方法は「誰がキーマン(決定権者)」か突き止めアプローチすることが重要です。

 

「居住系施設」で訪問診療担当の医療機関を決めるのは、施設長に任せている施設もあれば、本部が決めることもあり、企業の方針によりまちまちです。出来れば医療機関の渉外担当者を決め、施設本部のキーマンを継続的にアプローチしてくことが大変です。次回以降にその辺りをもう少し情報提供できればと思います。