診療所コラム⑪<整形外科コラムNo.4>

先日のコラムでは、クリニックが病院と比べて理学療法士の転職先になりにくい点として、①同じ理学療法士の仲間が少ない、②職場の雰囲気がわかりにくい、③拘束時間が長い、の3点を挙げました。
そのうち前回は、①の対処法、③はクリニックにおいては改善が難しいことを解説しました。今回は②の対処法を解説します。

 

②職場の雰囲気がわかりにくい
転職を考えている理学療法士が転職先のクリニックで知りたいことは何でしょうか。それは、リハビリ室で一緒に働くスタッフ、自分のやりたいリハビリができる環境かどうか、リハビリオーダーを出す院長先生との関係性など、応募したクリニックでのリハビリがイメージできるかどうかです。

 

「百聞は一見に如かず」なので、まずは職場見学をさせてあげましょう。普段リハビリを行っている時間にリハビリ室を見学させてあげて、普段の雰囲気を見れば自分がクリニックで働く時のイメージがつきやすいと思います。

 

また面接の際は、院長先生に加えてリハビリ長にも面接に立ち会ってもらうのがおすすめです。リハビリの現場は様々で、各理学療法士がお互いにあまり干渉せず、各々の得意分野のリハビリを患者さんに提供している所もあれば、リハビリ長の強いリーダーシップの下、リハビリ内容を共有しながらフィードバックや成長を重視する、体育会系な雰囲気の所もあります。どちらが正しいということはなく、どちらの方がその人の性分にあっているかが重要です。リハビリ長の人柄を知ってもらうことで採用後のミスマッチが防げますし、現場をまとめていく際に、採用時の責任をリハビリ長と共有することにも繋がります。

 

もうひとつ、面接の際にはやりたいリハビリ内容を掘り下げて聞き、院長先生から、できるだけそれが実現できる環境を整えていくことを伝えましょう。面接に来た方が、新しい分野に挑戦したいということであれば、その宣伝をクリニックとして全体でバックアップしてあげても良いですし、リハビリの質の向上のため、外部の研修に参加したいということであれば、その費用を負担してあげても良いと思います。整形外科クリニックの他院との差別化は、患者さんが普段接する理学療法士の人柄・リハビリ内容によると言っても過言ではありません。
弊社のクライアントの整形外科クリニックでの実際の例としては、靴の中に敷くインソール作りができる理学療法士には、リハビリの傍ら、その人に合ったインソール作りと販売を許可してあげました。また、フィットネス教室(ピラティスやヨガなど)での指導経験がある理学療法士には、通所リハビリでの集団体操を担当してもらっています。
積極性のある理学療法士の採用のためには、労力・資金を惜しまない覚悟があることを応募者に伝えましょう。ただしもちろん、スポーツ整形がやりたいと言っているのに若い患者さんが少ないなど、要望に応えられない時にはそれをはっきり伝えてあげることは必要です。

 

理学療法士は募集したからといって、すぐに集まるものではありません。できればクリニックのウェブページに、理学療法士募集のページを設けて、そこに条件を書いて常時募集をかけた方が良いと思います。条件には下限の給与だけでなく、経験年数によってどのくらいの給与からスタートするのか、給与の他に外部研修会に出た際の費用がでるのか、院内研修プログラムはどうなっているのかなど、なるべく詳しい条件を載せた方が、応募する人が転職のきっかけをつかみやすいです。また現在働いている理学療法士の方に、「先輩スタッフからの一言」のような形で、現場で働いている人の生の声を書いてもらうと、職場の雰囲気がイメージしやすく、見に来た人が応募しやすくなります。

 

次のコラムでは、理学療法士が集まるクリニックではその他にどんなことをしているのかを解説します。お楽しみに。