診療所コラム⑩<整形外科コラムNo.3>

前のコラムから少し時間が空きましたので、介護保険の導入についてはまたの機会にすることにして、今回は最近整形外科で頭を悩ませている、理学療法士の集め方についてお話したいと思います。

 

整形外科においては、理学療法士が集まる医療機関ほど、疾患別リハビリで高い点数が算定できますし、また通所リハビリや訪問リハビリ等の選択肢が広がります。ただ一方で理学療法士は募集してもなかなか集まりづらく、雇用できないために現状維持に留まっている医療機関が多いのもまた事実です。では理学療法士はどのような職場で働きたいと思っているのでしょうか。

 

まず前提として、理学療法士は保険医療機関・介護機関として独立して開業することができません。看護師であれば訪問看護ステーションを開業したり、柔道整復師であれば接骨院・整骨院を開業したりできますが、現状の制度で理学療法士は「医師の診断の下、リハビリを行う者」と定義されており、開業の道は閉ざされています。(例外:法人を設立して訪問看護ステーションを立ち上げ、訪問看護の一環としての理学療法士の訪問をすることはできます。)もちろん医療・介護保険を使わない分野であれば法律で制限されていませんので、例えばスポーツトレーナーとして独立することはできます。つまり原則として理学療法士は、医療機関か介護施設のどちらかで働くこととなります。

 

理学療法士は学校を卒業後、ほとんどの人が病院へ入職します。これは仲間や先輩が多くいる環境の方が学べることが多いからです。クリニックで理学療法士を雇用するには、病院である程度経験を積んだ方の転職先として選んでもらうことが必要になります。病院からクリニックへの転職にあたり障害となるのは、①同じ理学療法士の仲間が少ない、②職場の雰囲気がわかりにくい、③拘束時間が長い、の3点です。

 

③拘束時間が長いは、クリニックにおいては仕方がないことです。病院だと夕方には帰れるかもしれませんが、クリニックだとお昼休みが長いため、同じ労働時間でも帰れるのは夜遅くなってからとなってしまいます。これは患者さんの利便性のことを考えると、改善は難しいでしょう。しかしその他の①、②は改善の余地があり、転職先として選んでもらいやすくなるきっかけにすることができます。

 

①同じ理学療法士の仲間が少ない

この問題をすぐに解決するのは難しいです。ただ1度集まってしまえば、仲間内でよい情報が伝わり、理学療法士はどんどん集まってきます。つまり最初にある程度の人数をどうやって集めるかがポイントになります。

クリニックが病院に勝る点はどこにあるでしょうか。それは少人数であるがゆえに自由度が高いことです。大きな病院ほどきっちりしたプログラムがあり、それに従ってリハビリをする必要があります。新人のうちはそれで良いのかもしれませんが、次第に自分の得意分野のリハビリを患者さんに施したいと思うようになります。つまり得意分野を活かせるような医療機関であれば、転職先として選んでもらいやすくなります。

 

弊社クライアントの事例では、靴の底に敷くインソールを、患者さんに合わせて作ることができる理学療法士が応募してきたことがありました。院長は患者さんの中で希望する人がいればインソールを作って売ることを認め、また地域住民向け勉強会の1回分をその方に担当させて、インソールの勉強会にして常連の患者さんへのアピールの機会を作ってあげました。今ではそのクリニックのリハビリ部門の中心的な存在として、働かれています。

 

またクリニックのもう一つの利点として、クリニックでは顔の見えるリハビリを行うことができます。病院では、多数の患者さん対多数のスタッフという構図になりますので、担当の時間に来た患者さんを看ることになりますが、クリニックであれば1人1人の患者さんを責任もって担当することになりますので、患者さんが自分のリハビリのプログラムによって治っていく様子を見届けることができます。院長がそれぞれの理学療法士の得意分野を把握して、患者さんの症状に合わせてリハビリを振り分けることも、理学療法士のモチベーションアップに繋がります。

上記のような利点を強調することで、まずは少しずつ理学療法士を集めてみてください。一般募集でなかなか集まらない場合は、今いるスタッフに紹介を求め、採用が決まったら奨励金を出すのも有効です。良い評判が理学療法士の間で一旦広まれば、どんどんそのクリニック集まってくる傾向にあります。

 

②の対処法、理学療法士が集まるクリニックで行っていること、理学療法士を集める上でやってはいけないことを次回のコラムで解説していきます。