病院コラム⑩<地域包括ケア病床の施設基準厳格化>

令和4年改定前までの地域包括ケア病床

 

地域包括ケア病床は2014年に新設されて8年が経過しました。

 

地域包括ケア病床は、疾患を問わず60日間、比較的高い「丸め」の点数で使い勝手がいい特定入院料でした。データ提出加算の届出や疾患別リハビリのためのリハビリ室100㎡以上が設けることができた病院は、この地域包括ケア病床に転換することにより大幅増収となったところも少なくありません。

 

ただ単に入院の点数が上がっただけではなく、ベッドコントロールにも有効であったからです。一般病床には平均在院日数の基準があり、その基準を満たすために退院が先行してしまい病床稼働が上がらないという状況がよく見受けられましたが、地域包括ケア病床に自院の一般病床の入院患者を転棟させることで、平均在院日数の計算から除外し、平均在院日数の短縮化を図りつつ病床稼働を上げることができました。

地域包括ケア病床の施設基準厳格化

 

これまで、2年毎の改定で少しずつ見直しがされてきましたが、令和4年の診療報酬改定では、非常に厳しい要件の見直しが行われました。

 

入院料1と2の在宅復帰率は70%から72.5%以上となり、さらに許可病床数100床以上の病院は入退院支援加算1の届出を行っていない場合は10%減算となりました。在宅復帰率の要件がなかった入院料3と4についても改定によって70%以上の在宅復帰率が要件となり、満たさない場合は10%の減算となりました。また、入院料の名前の通り「地域包括ケアシステム」を構築する為に作られた病床であることが感じられる点として、「自宅等からの入棟割合3ヶ月20%以上」や「自宅等からの救急患者受け入れ件数3ヶ月9人以上」、「在宅医療等の実績」など求められる要件が厳格化され、こちらも満たさない場合には10%の減算となりました。さらに、一般病床で地域包括ケア病床を届出する場合には救急の実施も要件に加わっています。

 

以上のように地域包括ケアシステムを進めていくにあたって施設基準の厳格化が行われた形です。

 

 

地域包括ケア病床の悩み

 

弊社が関わっている中小病院でも、データ提出加算のハードルを超えさえすれば、転換が容易な特定入院料であったため、増収の策として10床程度を持った病院が数多くあります。しかし、令和4年改定による施設基準の厳格化によって、経過措置が切れる9月末までに基準を満たすことが難しい病院も出てきています。特にコロナ禍によってベッドコントロールが難しくなっていることもあり、今回の改定も相まって減算を余儀なくされている病院もあるのではないでしょうか。

 

 

これからの地域包括ケア病床の方向性に注目

 

次回、令和6年の診療報酬改定は介護保険とのダブル改定の年となるため、地域包括ケアシステムへの誘導をより一層強力に推し進めていくものと思われます。年金も含めて社会保障費は膨大な増加が予測されている中、厚生労働省は施設基準による誘導を行ってくることでしょう。令和4年改定の影響により地域包括ケア病床を取り下げて、元の一般病床に戻した病院もすでに出てきています。令和6年改定でさらなる基準の厳格化が行われた際に、自院の経営判断として地域包括ケア病床の運用をどうしていくか、今から方向性を考えていく必要があります。地域における自院の立ち位置として地域包括ケアシステムを担っていくのであれば、在宅医療・介護保険サービス事業を法人として展開していくことも考えられます。地域包括ケア病床によって、売り上げを伸ばしてきた中小病院は、大きな岐路に立たされています。