病院コラム④<備えあれば憂いなし>

たまたまかもしれないが、このところ中小病院の弊社の顧客に厚生局の適時調査や個別指導が入っている。
逼迫している保険財政への補填のつもりなのかと疑いたくもなる。平成28年12月20日に厚生労働省から「平成27年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況について」が発表され、全国での返還額が約124億4千万円(対前年度比約8億8千万円減)と書かれていた。
病院は、基本的に医療法に基づく立入検査を毎年受けている。医療法に照らし合わせて、医療安全や院内感染のこと、個人情報保護法のことなどを管轄保健所などの行政機関から派遣され第三者の目でチェックされる。
立ち入りの日はどの病院もとっても綺麗になる。包交車などカートが廊下を占領していることなく、オムツのダンボールが階段に積み上がっていることもない。リネン庫は驚くほどスッキリとし病室の扉はしまっている。
いつもこうであって欲しいと誰もが思っているのだろうが、倉庫がないとか運用上の効率性を考えるとついつい元に戻ってしまう。
毎年のお祭りによう感じていたが、最近驚くことにあった。保健所の立ち入りの際はいつも綺麗になっていたところが、全く片付けられていなかった。事前ラウンド時に気づいて話を聞いてみると、それまで長く勤めていた職員が退職し後任者は引き継ぎも受けていなかったということと、今のこの状態で良しとしていることがわかった。
当然、後任者を責めるわけにはいかないだろう。引き継ぎの有無の問題ではなく、本来は日頃から立ち入りがあってもそのままの姿を見せられる体制を病院が考えないとならない。
インターネットへの投稿や、スマホで誰もがカメラを持っている時代になった今、これまでの考え方を改めなければならないと感じる。
一方、厚生局の適時調査は届け出た施設基準がその要件を満たしているかを見に来るもので、毎年来るわけではない。先日対応した病院では7年振りと言っていた。
厚生局の怖いところは、要件を満たしていなければ返還を求められる点にある。医療法の立入検査も病院として取消されては大変なことになるが、そこに至る例は少ない。ご指摘頂いた事項を改善するチャンスはもらえる。しかし厚生局は診療報酬というお金が絡んでいる。指摘の結果、本来もらってはいけなかったものだったとしても、割り切ってお返しなんて出来ない。もう使ってしまっているお金であるし、入院基本料の返還ともなれば最大5年遡った場合、億単位の返還にもなってしまう。
いずれにしても、日頃からちゃんとしておけばいいのだが、なかなかできない。以前、病院機能評価コンサルで担当させていただいた病院の事務長さんから病院機能評価に取り組んだことによって、立ち入り前に大慌てで資料を揃えることが無くなって非常に良かったと感謝された。副次的なメリットがあった。
中小病院は人員に余裕がないことが多いのは事実だが、現場の担当者任せではなく内部で監査できる仕組を作っていくことが望ましい。