病院経営コラム③<中小病院のあり方を考える>

中小病院のあり方を考えるに、過去を振り返ると「病院」として、地域住民の外来、入院を一手に担う役割を全うし、急性疾患での急な入院などの急性期的治療や老人の長期療養機能も担ってきた。

15年位前の話になるが、60床くらいの中小病院で、15床を一般病床で25床を療養病床で20床を介護療養病床にしたいという相談もあったが、院長を説得するのに苦労した。

平成15年夏の病床区分届出に際し、「その他病床」から「一般病床」と「療養病床」の選択を迫られた時、両方の機能を対応すべく、ケアミックス病床が多くなった。機能分化よりも患者のニーズとしてどんな医療でも受け入れる病床が地域密着の病院であった。

一方で、ケアミックスという選択ではなく、小規模の専門病院という選択もある。リウマチ、膠原病や整形外科、胃腸科専門病院など、特化している分、無駄がなく効率化されている。有名なのは川越にある川越胃腸病院。病床規模は40床と決して大きくは無いが地域の消化器系の患者はここに集中している。近隣の病院もあえて消化器科を標榜しようとも思わない。こういった専門特化している病院は、地域の需要と供給がバランス取れているため、これからも生き残っていく可能性は高い。
しかし大半の中小病院は2次救急指定病院として救急も受け、帰る所の無い社会的入院患者も一部引き受け、地域のニーズを広く受け止めてきたというのが現状である。
ここしばらくの診療報酬改定で、高度急性期には手厚く報酬が評価されたことで、体力のある大規模病院は人員を確保し、急性期特化をしてきた。結果として地域によっては救急患者の取り合いで、ヒト、モノが充実している大規模病院が潤い、中小病院が縮小に追い込まれていった。このところ、中小病院の稼働率が悪くなっている要因として、大規模病院が入院患者の受け入れに積極的で、報酬の高い短期間での入院で回しているからであろう。中小病院であれば、家族の要望も聞き入れ、ゆっくり入院してもらって、退院までに家での療養生活の準備ができていた。必要に応じて入院中に介護保険を申請し、居宅介護サービスが使える環境を整えられていた。早期退院を大命題とする大規模病院はそういったことがまだ不慣れなことを耳にする。

これからの中小病院は、地域の医療環境を踏まえて、高度急性期病院とのすみ分けを本気で考える時期になっているのではないだろうか。近隣に高度急性期が無いエリアであれば求められる急性期医療を担わなければならないこともある。埼玉県でも80床弱の中小病院でDPCに早い時期に手上げをして急性期医療を行っている病院もある。その病院は近隣が大規模の療養病床が乱立している地域で、病床区分を選択する上で、考えることもなく一般急性期を選択しましたし、一般急性期で行くならDPCであると「診療情報管理室」の充実に10年以上も前から取り組んできた。
果たして自院を取り巻く環境がどうなっているのか?中小病院イコール「回復期」というわけでは無い。急性期を担う中小病院もある。
選択肢はだんだんと狭まってきているが、近隣に高度急性期病院があるのなら、高度急性期がやりたがらない在宅医療への展開や、入院が長期化する可能性が高い高齢者を積極的に受ける亜急性期対応など、環境変化に対応した方針転換が必要になってきている。