診療所経営コラム⑧<整形外科コラムNo.1>

今年4月(平成31年4月)に診療報酬改定の度に延長されてきた、要介護・要支援被保険者に対する維持期・生活期リハビリの経過措置が切れ、維持期・生活期リハビリは介護保険での算定となりました。4月以降は、介護認定を受けている維持期リハビリの患者さん(運動器リハビリの場合は150日以上経過した人)は医療保険でのリハビリが算定できないため、介護保険、つまり通所リハビリ、もしくは通院が困難な人は訪問リハビリに移行させなくてはなりません。

 
 全国の整形外科では大きく対応を迫られた状況ですが、大別すると、数年前からこの状況を見越して対応をしてきた医療機関と、今までと変わらない体制を維持している医療機関に分かれています。

 
 今までと変わらない体制を維持している医療機関で院長に話を聞いてみると、150日を超えても疾患の対象となる部位を変更することでなんとか対応ができると思っているようです。確かに高齢者の多くは複数の部位に疾患を持っているため、暫くはそれで対応が可能かもしれません。しかし疾患対象の部位を変更し続けて何年も患者さんを通わせることはできませんし、今後はリハビリの日数に関して、支払基金の査定も厳しくなってくるものと考えられます。するとトップ(理事長や院長)には、介護保険の対応をするのかしないのかの、大きな決断が迫られていると言えます。

 
 トップの方針が決まらないとリハビリの現場は混乱してしまいます。ある医療機関では、理事長の判断がなかなか決まらず、運動器リハビリの算定上限日数を超えてしまう患者さんへの対応が未定のまま、4月を迎えてしまいました。そこで現場のスタッフは仕方なく、150日を迎えた患者さんに対して、「介護認定を受けている方は当院ではリハビリができなくなりました」とご案内していました。すると市役所から連絡があり、「貴院の患者さんから介護認定を取り下げてほしいとの申し出がありました。貴院ではリハビリを続けるためにそのような案内をしているのですか!」との注意が入ってしまいました。150日越えの患者さんは診ないとしても、患者さんを適切な介護事業所へ紹介するなど、予め対応策を考えておかなかったために起きてしまった混乱事例と言えます。

 
 では今後、医療機関で介護保険でのリハビリに対応していくべきなのでしょうか。それを判断するためには、①通院患者の年齢層分析と介護保険に移行する患者の洗い出し、②周囲の高齢者人口を調べた上での将来需要予測、③自院のリハビリスタッフが介護保険に対応できるのか、をみていく必要があります。それぞれどのような分析が必要か詳しい内容は、また次回。