前回の診療報酬改定では、主に内科のクリニックがターゲットになって診療報酬が下げられました。弊社クライアントのクリニックでも、医業収入が昨年同月と比べて10%程度減収となっています。
一方で、昨今の物価高騰の影響を受けて医薬品等の仕入れが上がり、またスタッフの給料も定期昇給・ベースアップともに上がり、コストはどんどん上がっています。
その結果、クリニックの利益は減る一方で、院長先生が自分に入る給料を下げたという話もよく聞きます。
そんな中、今クリニックで喫緊の課題となっているのが人材の確保です。
看護師はコロナ禍のワクチン接種事業で、人材不足・給与の高騰が起きましたが、その後政府によるワクチン接種事業が終わった後も人材不足が解消されず、給与相場も依然として高止まりしたままです。
医療事務は、診療報酬が下げられたことにより、なかなかスタッフの給与改善が進まない中、他業界では給与が高騰しているため、人材が他業界へ流れてしまっています。募集の給与金額を上げようにも、既に雇用しているスタッフの給与との兼ね合いから、容易に上げる訳にはいかず、院長先生の頭を悩ませています。
そこで前回の診療報酬改定で新設された、外来・在宅ベースアップ評価料を届出して、少しでも高騰する人件費の原資にしようと決断をされたクリニックが増えました。改定のあった2024年6月時点では3割程度のクリニックしか届出していませんでしたが、2025年4月時点では7割近いクリニックが届出をしています。(弊社のクライアント内の集計結果)
これには、生産性向上・職場改善支援金の支給要件がベースアップ評価料を届出している医療機関となっていたこと、医師会が届出を推進したこと、届出様式が大幅に簡素化されたことが要因として考えられます。
他の競合クリニックがベースアップ評価料を算定して、人件費増加に伴う持ち出しをできるだけ少なくしている中で、ベースアップ評価料を算定していないと、人材募集をする時に不利になってしまいます。特に患者数の多いクリニックではベースアップ評価料の算定を検討してみてください。
また現在問題となっているのが、人材仲介業者の存在です。
かつては、募集期間や原稿面積に応じて掲載時に料金を支払う方式が主流でしたが、現在では、募集掲載は無料で採用時に料金を支払う、いわゆる成功報酬媒体が主流となっています。それに併せて紹介会社にも声を掛けるケースが増えました。
これには「お祝い金」と呼ばれる、募集会社から転職者に支払われるお金が影響しています。
成功報酬媒体や紹介会社を利用すると、採用時に職種によっては数十万円程度の支払いが必要ですが、その30%程度が「お祝い金」として支払われているようです。そのため、転職者は前述の会社を通じて応募をするようになっています。
数か月すると再び転職の斡旋をする会社もあるらしく、高額の料金・手数料を支払っても人材が定着しないという事態にもなっています。
転職者も転職を繰り返しているとスキルも身に付かないため、転職市場の人材の質も落ちてきている気がします。
厚労省はこのことを問題視して、今年の4月から「お祝い金」を原則として禁止しましたが、今のところ、成功報酬媒体や紹介会社を利用して転職をする流れに変化は見られません。
そのような実態を見据えてクリニックでできることは、まず①離職の防止です。
転職者の質が落ちてきていることから察するに、優秀な人材は各医療機関が手放さないようにしていて、動いていないと思われます。給与・職場環境の改善等、スタッフにとって働き続けたいと思ってもらえるようなクリニックになってください。
次に、➁患者や地域で評判の良いクリニック⇒自力で人材が集まるクリニック、を目指すことです。
患者さんの評判の良いクリニックでは、患者さんの中から応募者が出てきたり、クリニックのウェブページ上の求人ページから問い合わせが来たりします。患者さんとして受診して気持ちの良いクリニックで働きたいと思うのは自然なことです。自らクリニックへ直接応募してくる人はやる気がある人が多く、結果的に紹介料を払って来てもらう人よりも優秀な人が採用できることがあります。
最後に、➂スタッフの紹介で人材を集めることです。
数十分の面接で人材を見極めるのは非常に難しいですが、スタッフの紹介による入職では、紹介したスタッフがその人のことを熟知しています。スタッフとしても自分の職場に招き入れる人ですから、一緒に働いて気持ちの良い人を紹介することになります。元々知っている仲なので、結束力強化にも繋がることが多いです。
前述の話にも繋がりますが、既に働いているスタッフに紹介してもらうためには、魅力あるクリニックにしなくてはなりません。ネガティブな感情になる職場に、自分の友人を招き入れようとはしないからです。
医療業界の環境がますます厳しさを増す中、大事になってくるのは、先生の専門性に合った医療行為をサポートできる看護師、診療報酬の知識や患者さんへの接遇に長けた医療事務、自分の技術で患者さんを集められるような理学療法士などの優秀なスタッフを集められるかどうかです。応募する人材が限られているので、クリニックごとに集められる人材の格差がどんどん広がっています。
ケアマックスでは、人材が定着しやすいクリニックの事例が揃っています。職場環境改善、院長先生とスタッフのコミュニケーションの円滑化などのアドバイスを行っていますので、お気軽に弊社までご相談ください。