病院経営コラム①<介護報酬改定で病院に震撼>

平成27年4月は介護報酬改定。弊社の顧客でも介護療養の病院や老健施設がある。当然改定前後のシミュレーションや「加算」に対する対策等、各施設と幾度となく検討会を開いて対応を決めてはきましたが、その効果などを見ている限り、なかなか一筋縄ではいかない。単純な単位数の増減だけでなく、「リハビリとは」という考え方の見直しなど有り、複雑になってしまっている。また、平成27年4月の介護の改定は、医療保険である病院にも影響が出てきている。

平成27年4月の改定をみると、介護3施設のそれぞれの役割が明確化されてきた。2025年問題に向けて医療も介護も足並みを合わせての改革が進んでいることの現れであろう。

平成26年4月の診療報酬改定では急性期、回復期、慢性期のいずれの段階からも「在宅復帰」を目指すようになり、退院後の受け皿としてサービス付き高齢者住宅(サ高住)が整備され、一方でサ高住など集合住宅への在宅医療は大幅な減額がなされた。

平成27年4月の介護報酬改定では老健施設の役割として「在宅復帰機能」がより一層求められてきた。在宅復帰が出来ている老健はまだ全体の25%程度しかありませんが、次回の改定までには在宅復帰が出来る老健にならないと更に介護報酬は下げられてくると予測される。また、特別養護老人ホームは要介護度3以上でないと入れず、かつ食費・居住費として自己負担金が上がってしまう入所者も多くなっている。自己負担金の増は各家庭の生活に影響し、入所が続けられず自宅に引き取らなければならない家庭も出てくのではないか。

介護3施設の残りのひとつ、介護療養病床は平成30年3月末の廃止と言われながらも、今回の改定では「医療的重度者」「ターミナル患者」を受け入れる機能強化型が生まれた。今までの寝たきりで介護力を必要とする要介護度4や5の方々を入所させているだけでは評価されず、医療的重度者を受け入れる役割、ターミナルの患者を受け入れる役割を求められた。

このことは医療療養病床と同じような患者を受け入れることとなり、今まで介護と医療とで棲み分けできていたものが、今回改定により患者の取り合いが生まれてくるようになると予測される。医療療養病床は医療区分が高い、区分2および3を80%以上受け入れて医療療養1を算定しているところが多いので、医療密度が高い患者を医療療養に入院させて、介護度が高く医療密度が低い患者を介護療養に入所させていたケアミックスの病院は非常に難しい判断を迫られるようになった。

療養病床からの在宅復帰率の加算、老健からの在宅復帰率の評価、急性期、回復期からの在宅復帰率評価と介護保険の現役並み収入の方の2割負担(今の1割からすると倍額!)という自己負担増という経済面での入院継続困難者の続出で、社会的入院の解消イコール医療費のかからない、自宅等での療養が今後の主体となることが見えてきた。

これからは自宅療養を行う患者が多くなってくる。地域医療を支える病院として、在宅医療へのシフトと地域の診療所のバックベッドとしての役割が求められている。

かつて、在宅医療の管理料が診療所にしか算定できない時代があった。当時弊社は、病院にサテライトの在宅クリニックを開設してもらって在宅の管理料を算定してもらったところがいくつもあった。いまでは200床未満の病院は在宅療養支援病院になれるようになったので、その在宅クリニックを病院に吸収して、「機能強化型の在宅療養支援病院」として活躍いるところが多くあります。

地域医療をになう病院として、自ら在宅医療を行うとともに、地域の在宅医療を行っている診療所の先生方の支えとなることも病院の重要な役割となります。

次回の病院経営コラムは、病院経営基礎知識シリーズ1「病院の報酬を考える」です。