病院経営コラム②<病院の報酬を考える(基本編)>

病院の報酬を考えると大きく分類して3つに分けられる。
一つは入院に係る報酬、二つ目は外来に係る報酬、最後に健康診断等の保健衛生事業に係る報酬である。その他、介護報酬がある場合や治験をやっているところなど有るとは思うが、本業といえるのはこの3つである。
大部分の病院において入院収入は報酬全体に対して大きな割合を占めており、病床の稼働数が直接的に病院の利益率に大きく影響を与えると言えよう。入院患者1人の報酬は外来患者の十数人分にもなりオペを行っている病院であれば月に100万円を超えることも有る。1床が埋まっているかいないかが大きな差になる。

入院収入のポイント

入院収入を見る際のポイントは、日当点と平均在院日数であろう。同じような他の病院に比べて日当点が高いのか?低いのか?診療行為として適切な算定が出来ているのか、取り漏れているものがあるのか等、日当点の分析が重要である。平均在院日数は、理屈でいえば1日伸ばせば、日当点1日分の収益改善となる。当然必要以上に伸ばすものではないが、このことを医局の医師に理解しておいてもらえると良い。入院期間を適切に伸ばすことで、患者から十分な治療をしてもらって、より良い入院だったと感じてもらえるのではないだろうか。昨今、平均在院日数の短縮の施策と、重症度の測定、入院初期の高報酬化で退院促進という命題があり、まだ医療の必要性が高い状態での退院も現実問題として起きている。

外来収入のポイント

病院の外来レセプト単価は備えている検査機器が違うので診療所よりも高い。
診療所で薬の処方と医学管理だけでは500点程度であるが、病院で採血やCT撮影などすれば軽く1,500点は超える。患者の意識も、病院での外来は必要な場合、精密に自分の体を検査してもらえるであろうとの思いがある。病気の早期発見には兆候を察知して病気を疑い検査を施すことが肝要である。以前、ある患者が長く病院の糖尿病外来に通っておられて、その方が他の病院でガンが見つかった。その患者曰く、長くこの病院に通って自分のかかりつけの病院と思っていたのに、がんを見つけてくれなかったと怒っておられた。糖尿病の管理は専門医が行っていたが全身管理は出来ていなかったという結果であろう。患者のかかりつけ病院という期待に応えるためにも全身管理の検査を年1回はやる必要がある。

保健衛生事業のポイント

前述のように全身管理の一環として、保険外の健康診断がある。健康診断の受診率が低いのは病気になれば医者にかかればいいと言う国民の意識の問題もあるが、保険者にペナルティーをつけて医療費の削減を目的に、病気にさせないためのメタボ健診が行われている。広く多くの方に健診を受けてもらうことは、病気の早期発見、早期治療のための入院・外来治療患者の予備軍として大きな意味合いがある。病院の報酬を考える場合においては、将来の患者候補と考えていく方が良い。よく企業から健診の見積もりを依頼されて、保険点数相当の数字を試算して、見積もり提示しているケースを見かけるが、多少の値引きがあったとしても健診を受託していくことの方が良い。医事課職員のついでの仕事と扱われている傾向にあるが、できれば健診を担当する職員を専属に指名するかもしくは経営幹部層がしっかりと担当する方が良い。

最後に、病院の報酬を考えるにあたっては2年に1回の診療報酬改定も忘れてはいけない。これからのマイナス改定を考えると報酬にも大きな影響となる。しかしあくまでも単価の変化であったり、国の考える方向への誘導だったりするので、そこに一喜一憂するよりも、患者数を確保し続けることが大切で、入院患者の数、外来患者数、健康診断を受けてくれた方々の数が、少なくとも前年対比プラスになっていることに意識を強く持つことが重要である。