病院コラム⑦<中小病院ケアミックスの限界>

このところの診療報酬改定は「病床の機能分化」「連携」について大きく梶を切っています。長いこと地域医療を支えていた病院も診療報酬改定での厚生労働省の方向性に合わせていかなければ生き残れない。20年以上この業界に関わっているが、昔は60床くらいの小さな病院でも、「急性の患者もいるし長期療養の患者もいるし、介護保険の患者もいる」とのことで、小さな病床を3つに分けて運営していた病院もあった。当然、病棟単位の看護配置なので、無謀であることはわかっているが、そのようにやっていきたいという院長の思いもわからないでもない。しばらくしてその病院はどこかの法人に買い取られていったように聞いている。

 
 一時期、一般病床と療養病床のケアミックスが一番いいと言われていた。一般病床で出来高算定して検査や画像診断を報酬としていただいた上で、入院が長期になれば療養病床に転棟してもらう。療養病床はいつも95%稼働していた。老人医療費無償化時代で病院が一番潤っていた時期だった。
しかし、療養病床に医療区分・ADL区分による報酬の見直しが始まったことで大きく変った。「社会的入院の一掃」ということで、医療区分1(医療の提供が少ない)の患者はとても低い入院基本料となってしまった。この点数は、原価を考えての点数ではなく政策的な点数らしく、やっていけないことをわかっていての点数設定だったそうです。

 
 今では、療養病棟に転棟させたくても医療区分がつかない患者は転棟させられない。かといって、大病院から直接療養病床に医療区分のある患者を受けたくても受けられない。昨年の改定で、療養病棟が7対1病院の受け皿となり得たので、直接療養病床で受け入れるような体制を作るようお願いしていたが、どうしてもスタッフの技術的な問題やこれまでの出来高病棟を経由しての包括病床への転棟というやり方から抜け出せなかった。療養病床なのに80%稼動も行かない病院もある。

 
 急性期も回復期も、慢性期も一つの病院で全て診ることは難しくなったと思う。やはり機能特化型が無駄のない経営といえるのではないかと思う。関東北部の整形外科病院で50床弱の病院がある。手の手術に特化している病院で、手術の希望者は近隣地域だけでなく、遠方からくる方も結構多い。昨年の改定で疾患別リハビリでの維持期リハビリが算定できなくなった。この病院も選択を迫られたが、結局、維持期リハビリ患者は近隣の整形外科診療所や介護保険の通所リハビリを紹介することにした。うちは手術後の急性期及び回復期のリハビリに特化すると決めた。入院患者は、限られた疾患でもあり、在院日数も短いので稼働率は高くない。腰椎圧迫症の高齢者を多く入れれば稼働は上がりますが、高齢者は何かしら内科疾患を持っているため、医師及び看護師の対応力問題が出てしまう。よって、手の手術の患者に特化することで機能はすっきりしている。
一方で都内の病院で、近隣の大学病院などの超急性期が乱立している地域での100床強の病院で、客観的にみてどう考えても

 
 「回復期・慢性期」の機能を担うべき病院(患者もそういった方が多い)なのに、院長は急性期をやりたい、救急車を取りたいと意固地になっている。救急を受け入れる体制を整備することに非常にコストがかかってしまっていて、ぎりぎりの経営になってしまっている。結局この病院は13対1病床で90日越療養算定の届けを出し、地域包括ケア病床を持って急性患者と回復期・慢性期患者を診ている。

 
 院長の「急性」への思いもわからないでもないが、本当にその地域に必要な病床は何なのかを見極めて、決断しなければ生き残っていけません。