病院コラム⑤<病院の渉外活動>

病院だって渉外活動

病院やクリニックもサービス業だと言われるようになって久しい。
昔のように待っていれば患者が来る時代ではなくなった。地域に病院が1つしかなければ、競争も無く入院患者がいつもあふれている状態が続くはずだが、いまは事情が違う。
病床稼働率を上げるための方法はいくつもあるが、今回は最近良く聞かれるようになった「病院の渉外活動」について書きたいと思う。

渉外活動と言っても、モノを売り込むわけでは無く、病院自身のアピールと連携先との良好な関係の構築である。一般的に担当する部署は地域連携室といわれる。最近では、中小病院にも地域連携室が出来てきているが、患者相談室と兼務であったり、看護部長や事務長が兼務したりしている。多くの人を雇用できない中小病院にとっては仕方がないことかもしれません。自身の病院機能をしっかりと説明できて、信頼関係を築ける、人付き合いのセンスがある人となると病院職員の中でも限られた人であろう。

渉外活動を行うに当って、手ぶらで行くわけにもいかないので、病院を紹介するツールが必要となる。当院を紹介するパンフレットだけでなく、どういった患者を受け入れられるのか、逆に受け入れられない患者はどういう患者なのか分かりやすく表つくるなどの工夫が必要である。また、一番の関心ごとは“料金”である。当院に入院すると入院費がどのくらいなのかを計算しておくと良い。

実際に渉外活動としてまわってみると「いつも満床と断られていたので、空いていないと思っていました。」という回答が多く、過去の印象をずっと引きずっていることがよくある。これをきっかけに、タイミングよく紹介患者をもらえたりもする。

これまでいくつかの地域連携室立上げを協力してきたが、一番のポイントは院内連携だと思う。せっかく渉外活動にでて、当院の受け入れられる入院患者を紹介もらっても、院内の医師や看護師にあっさり断られてしまっては、もう紹介は来なくなってしまう。地域連携を担当する者は、院外だけではなく、院内の連携もうまく作り上げていかなければならない。そのためにも、渉外活動前に、病棟を担当する医師や看護師と十分な話し合いが必要となる。入院患者受入に対してのコンセンサスを得ておかなければならない。紹介をもらってから、入院の受入回答までに時間がかかってしまっていては他に行ってしまうし、病院内のコミュニケーションが上手くいっていないとクレームになってしまう。病院の渉外活動は、院長筆頭に病院全体で企画し、応援していかなければ成功しませんし、収益も上がっていきません。

病院の機能分化という国の考えのもと、自病院の機能を正しく発信して、かつ、内部のスタッフとの橋渡しをする、渉外を担当するトータルコーディネーターを病院内部で育成していかなければなりません。