介護・居住・街づくりコラム①<日本版CCRCと地域包括ケアシステムについて>

皆さんは、CCRC(Continuing Care Retirement Community)という言葉を知っていますか?1970年代のアメリカで始まった健康なシニア世代の生活共同体の総称で、元気で充実した生活、健康的な食事、充実したアクティビティ(活動・行動)、趣味仲間がいるコミュニティを作り出した理想的な共同体、と言われています。日本国内の地方において、これを実現する事で元気のあるシニア層が活躍し、地域活性化、経験値を活かした知識や技術の継承によって、次世代に繋がる教育の実現も可能になると言う事です。

何故、この様な日本版CCRCの推進が出て来たのかというと、平成27年に地方創生担当大臣 石破 茂氏が地方創生推進を掲げたところから来ています。

国が考える地方創生推進とは「生涯活躍のまち」創生と位置付けられ、主な施策1として①地方産業の競争力の強化②地方への人材の還流・人材育成・雇用対策、施策2の移住・還流として①地方移住の推進②地方拠点強化・地方採用・就労拡、施策3の若者対策として①若者雇用対策の推進、②結婚・出産・子育て支援が掲げられています。

この背景には①日本の総人口2060年1億人の人口確保②東京一極集中の是正③2025年迄に75歳以上の後期高齢者が首都圏で175万人増加する事にあります。

その為、国として本格的に新型交付金を交付し、地方総合戦略に基づく事業・施策を実施して行くものです。28年10月段階で236の地方公共団体が推進の意向を示しています。

具体的日本版CCRCの形態として、
①高齢者の移住ではなく、アクティブシニアの移住が前提
②移住先と現住所との二重生活もしくは完全移住
③移住先で住まいの確保・仕事の確保・医療の充実・コミュニティの充実・交通の利便性が重要。医療として急性期医療

の充実と慢性期医療の充実が必要(アクティブシニアと若者が対象)
④アクティブシニア・高齢者だけでなく・若者との協働・コミュニケーションが取れる事が重要
⑤移住先の住まいに掛かる費用は、年金範囲が望ましい

以上の事が日本版CCRC「生涯活躍のまち」を形成、実現する上で必要になります。
「生涯活躍のまち」構想のアクティブシニアの生活イメージとして
①健康でアクティブな生活・就労の実現と継続的ケアの提供②自立した生活が出来る居住環境の提供③入居者の参画の下、透明性が高く安定した事業運営によるコミュニティの形成を一体的に実現する事が重要になります。
その為には、各公共団体と民間が一体となり、居住・就労・医療・介護(地域包括ケアシステムの確立)・交通・コミュニティの整備が求められます。
まとめとして、「生涯活躍のまち」構想の実現には、アクティブシニアの移住が最優先であり、75歳以上の高齢者の移住が目的ではない事がポイントです。
その為には、移住先は関東圏又は静岡県(東京から1時間30分以内の圏域)が限界で、住まい・生活・就労・医療・交通の利便性を考えるならば東京都下の23区外が理想です。
何故なら、就労に関しては、都心か近隣に就労機会が多く、現状の仕事の延長も考えられるからです。趣味を活かせる場所も多いという利点もあります。
医療を考えると、第1段階として急性期医療を考えた入院・外来機能の充実(アクティブシニア年齢層50歳代から70歳までを考えた場合)が必要で、住まいは集合住宅又はサービス高齢者住宅が考えられます。
第2段階の後期高齢を迎える75歳以上の医療・介護を考えると、慢性期医療(入院・外来機能)と在宅医療、介護施設と医療療養、在宅復帰施設、老人保健施設、特別養護老人ホーム等が一体的に切れ目のない地域包括ケアシステムの構築が必要になります。